神戸市外大

現在休学中の身でありながら、
エルサルバドルの
日本国大使館に勤務しています。

黒原志典 外国語学部 イスパニア学科 2019年度入学/2027年度卒業予定

 高校生のころまでは、英語が好きだったので英米学科を受験しようと考えていました。でも、中高と6年間も英語をやってきましたし、神戸市外大なら、専攻言語が英語以外の学科では、兼修言語として英語を学べるので、ほかの言語を学んでみようと思うようになりました。スペイン語の美しい発音や言語を取り巻く多種多様な文化に魅せられ、英語、中国語についで話すひとの数が多いこと、話されている国?地域がいちばん多いことから、自分の将来の可能性を大きく広げてくれるに違いないと考え、大学で本格的にスペイン語を学ぶことに決めました。

神戸市外大には、休学を肯定的に受け止める環境が、
ごく普通にあります。

 神戸市外大の学生は、それこそ多種多様です。4年で卒業して一般企業に就職するひともいれば、大学院へ進むひと、海外へ留学するひと。そして、就職を遅らせてでもじぶんの信じる道を歩むひともかなりいます。それだけに、休学することを肯定的に受け止めやすい環境があり、そういう空気が自然に流れていると感じます。
 じぶん自身は在学中に許される休学期間いっぱい(3年間)を活用しようと考え、在外公館派遣員制度に挑戦することを決めました。スペインへ1年間の交換留学に行っていたのですが、そのときに在外公館派遣員制度を知りました。外務省専門職員試験への挑戦も視野にはあったのですが、自分には言語力はおろか、外交に必要な知識も全く足りておらず、外交の世界で働く姿が想像できませんでした。そのため、スペイン語力を磨きながら、実際に外交の世界に触れることのできる在外公館派遣員制度を選びました。

外交という世界を肌で感じたかった。

 試験に合格し現在は、在エルサルバドル日本国大使館で勤務しています。神戸市外大も参加している「模擬国連」という国際的なイベントで、担当したのがエルサルバドルだったこともありますし、スペイン語のスキルがいかせるということも大きかったです。エルサルバドルは最近まで、「世界で最も危険な国」のひとつに数えられていました。でも、治安の悪さは現在の大統領によって解消され、いまでは中南米でも上位にランクされるほど治安の良い国になっています。情勢が大きく変化しつつあるエルサルバドルのいまを体験しながら、外交の最前線で働くことができる経験は、とても貴重でありがたいものだと感じています。

エルサルバドルの大自然(火山)

La Libertadの海

広大なコーヒー農園

コーヒーチェリー

仕事は外交官の方たちの補佐的な内容が多いのですが、
大使館業務を支えているという自負を持てるので、
やり甲斐はとても大きいです。

 毎日の仕事は、メールのチェックにはじまり、その日のスケジュールチェック、本省の会議に出張される方のチケットの見積もり依頼やチケットの手配、大使の会食のサポートや公邸会食メニューの翻訳、配車のコントロール、出張で来られる外交官のサポートや空港への送迎、通訳と翻訳、文化広報イベントへの参加、現地職員への指示や打合せなど。やるべき業務は多岐に分かれています。置かれている立場的なこともありますが、外交官の方たちがより効率よく的確に動けるように補佐する役割が主になります。他方、部下にあたる現地職員の方々とは、密にコミュニケーションを取りながら、適宜指示を出して業務を割り振っていきます。現地職員の方はラテン気質で自由気ままかなあと勝手に想像していましたが、実際はとても真面目で働き者です。そういった面では日本人の労働観と近しい部分があるので、とても働きやすく感じます。

当地外務省で披露されたエルサルバドルの伝統舞踊

合気道の文化交流イベントの様子

エルサルバドルのクリスマスの街並み

ここでのいちばんの経験は、
APEC2024の応援出張ができたことです。

 2024年11月にペルーで開催されたAPEC(アジア?太平洋経済協力)の会議に、上司の推薦で応援出張者として参加させてもらいました。他の国々で勤務する在外公館派遣員の同期たちと比較しても、これはめったに経験できない貴重な出張でした。

APEC会場前での写真

 ペルーではエルサルバドル同様にスペイン語が話されています。出張業務としては言語面のサポートを中心に、総理大臣や外務大臣、その他随員の方が移動される際の配車業務を担当しました。過密日程なうえに日本のトップの方々でしたので、現場は相当にピリピリした空気が漂っていました。現地ドライバーへの指示を一歩間違えるとスケジュールが狂ってしまい大変なことになりかねません。正確に指示を出し、円滑に業務を進めるためには、スペイン語力に加えて信頼を得る必要があると考えた私は、空き時間の他愛のない話などを通して可能な限り信頼関係を築くようにしました。対話を重ねることで、それぞれの運転手のスペイン語に耳を慣らすだけでなく、各人の人柄などを把握し、それぞれに合った指示を出すことができたと思います。

運転手と相談をする様子

 初の応援出張ということもあり、業務面での苦労は大変なものでした。現場で上司と衝突してしまったりして、反省もたくさんありました。とは言え、反省をすぐにいかしてやり方を改善できるのはじぶんの持ち味でもあるで、その積極的な姿勢と、強みでもある言語力でなにごとにも建設的に取り組むことができました。おかげで、総理大臣や外務大臣、随員の皆さまのサポートを無事に務めることができました。終わってみれば、参加期間中の経験はとても楽しいものでした。ここに参加できたという事実が、今後のじぶんにとって大きな意味を持つであろうと、ヒシヒシと実感がわいています。
 日本という国のイメージに、じぶんの態度や行動も貢献しているのだと、その責任の重さは大学にいるだけでは実感できなかっただろうと思っています。APECでは、じぶんのスペイン語が通じる、外交に役立ったという事実があったので、かなり語学力への自信につながりました。そして、日本を代表している外交団の一員であることを、強く認識することができました。また、社会人として働くうえでの基本的なことはもちろん、肝要なことも、この現場から学ぶことができました。

車列を組み外務大臣の到着を待つ様子

車列を組み総理大臣の到着を待つ様子

APEC会議の様子

じぶんの一挙手一投足。
すべての行動が日本のイメージと関わっている。

 大使館で勤務している以上、肩書きがどうであれ、ひとたび公の場に出れば「在エルサルバドル日本国大使館」の代表、ひいては日本という国の代表という目で見られます。APECのような場であれば尚更です。応援出張の配車業務の中で、他国の外交団と交渉する場面がありましたが、タイトなスケジュールの中、思うように事が運ばず、つい焦った行動にでてしまいそうになりました。しかし、自分の一挙手一投足が日本のイメージを作っていることを思い出し、誠実でありながら確固たる意志を持って交渉することができました。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、日本という国を背負って働くという経験は、国際人を目指す自分にとってかけがえのないものだと思います。

後輩の皆さんへ。何をしたいのかを
じっくり考えたうえで、自信を持って
じぶんの道を進んでいってください。

 大学生は良くも悪くも、じぶんの好きなように時間を使うことができます。どう使うかはひとそれぞれですが、最も避けるべきは「無気力に日々を過ごす」ということだと思います。ただボンヤリと適当に毎日を送らないでください。時間があるからこそ、じぶんが将来なりたい姿をじっくりと考えるようにしてください。じぶんが興味を持つこと、関心をいだいたことに向かって精一杯努力をしてください。時間の使い方次第で、今後の人生を大きく変える経験と出会えることになります。じぶんがこころからやりたいと思うことに素直に向かって前進して行ってください。失敗を恐れず自由に、貪欲に、そして何よりも楽しむことを忘れずに進んでください。

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